tobiha

Interview 開発インタビュー

松本哲也×小塚崇彦さん Tobiha開発スペシャル対談

これまでのフィギュアスケート靴とは一線を画す『Tobiha』。
カーボンメーカー代表である松本哲也が考案・開発、フィギュアスケーター小塚さんの全面協力により、いまも進化し続けています。
開発による苦労を分かち合いカタチにしてきたふたりだからこそ話せる、知られざる開発秘話です。

ブレードを開発しているときから、
「誰か靴をつくってくれないかな」と思っていた
ふたりの出会いのきっかけ
小塚:
あるレースで清水さんにお会いしたのですが、その際に「自分のブレード(KOZUKA BLADES)を開発している」という話をしたんです。すると翌日に、清水さんから「紹介したい人がいる」と電話をいただきました。それが松本さんでした。
松本:
「フィギュアスケートの靴をつくりたい」という長年持ち続けていた想いを、いつだったか、清水さんに伝えたことがありました。そのことを覚えていてくれたんですね。
小塚:
「誰か『KOZUKA BLADES』に合う靴をつくってくれないかな」という気持ちがずっとありました。清水さんからの電話の後、急いでティーワンさんのオフィスにお邪魔しました。スピードスケート靴の話や、どんどんタイムが上がって実際に優勝されたという競輪選手の方の話など……色々と伺っていくうちに「カーボンってすごく画期的なんだな」と思いましたね。
開発をする上で最も苦労したのは、“しなり”を出すところ
特許申請中の技術
小塚:
『Tobiha』は、一足一足が同じクオリティを保っていることは大きいですね。従来のフィギュアスケート靴にとっていちばんの問題は、個体差だと思っていたので。
松本:
今後常に同じものをつくるということも、個人の好みでつくり込むことも可能だと考えています。これまでのカーボンにおける技術と経験が活かせていますね。
小塚:
そもそもカーボンは硬いだけで、“しなり”という発想がありませんでした。だからこれだけしなるのがとても不思議で、しかもものすごく曲がる。ブニブニしている感触にも、衝撃を受けたのを覚えています。
松本:
理解はしていたけれど、結局その“しなり”を出すところが開発する上で最も苦労した点でしたね。特許申請している技術になります。
フィギュアスケーターにとって、靴はカラダの一部
開発課題を乗り越えたエピソード
小塚:
ぼくたちフィギュアスケーターにとって、靴は道具の粋を超えて、もはやカラダの一部なんですよね。だから靴に問題があると、技術や怪我のしやすさにも影響してくる。だからこそぼく自身だけではなく、ほかのフィギュアスケーターたちにも試していただきながら、松本さんに細かくフィードバックしていきました。
松本:
小塚さんたちのコメントは的確ですが、カタチにしていくのはとても大変でしたね。フィギュアースケーターが求める“履き心地”と“怪我しにくさ”、ここはなかなか数値化しにくく、どこまで機能が出せるのかはぼくの中では苦労した点でした。
小塚:
開発で悩まれているときに、着地点にジャンプした瞬間がありましたよね。ぼくの母が言った「革のようなしなやかなスケーティング」というひと言だったと思います。
松本:
あのひと言は、本当に衝撃でした。帰りの新幹線の中で、一人ずっと考えされましたね。それまでは「カーボンである程度硬くて、軽ければいいだろう」っていう単純な発想しか持っていなかったので、そうか!……と。
一点モノではなく、常に同じクオリティの靴をつくることができる
『Tobiha』の魅力
小塚:
ぼくは、トライアンドエラーの末にたどり着いた、いまの硬さが気に入っているんですが、選手によっては「もっと硬いほうがいい」という人もいれば、体重の軽い選手だと「もっと柔らかくないと足首が曲がらない」という要望もあると考えられます。こうした個々の特徴に合わせられること。この『Tobiha』の魅力かなと感じています。
松本:
小塚さんのおっしゃる通り、本当に一つずつ、個人の好みでつくりこむこともできますね。従来の革製品とは違って、一点モノではなく、常に同じクオリティの靴をつくることができる。だからこそ、その選手に合わせた靴づくりも可能になります。
小塚:
自分の演技を高めるため、怪我をできるだけしないために、靴選びにこだわっているプロの選手は多いと思うんです。そういった方に限らず、小さい頃から怪我に苦労しているスケーターはたくさんいます。だからこそ、自分の足に合わせて一緒に成長していけるような靴になることにも期待しています。小さい頃って、誰もがトップ選手になる可能性そのものなんですよね。
『Tobiha』は選手の最大限の力を発揮するための相棒になる
想定する今後のフィギュアスケートへの影響
小塚:
2000年ごろから、徐々にフィギュアスケート靴が変化していった流れがありました。それまでは全面的に革製品だったのですが、少し違う素材が入ってきました。そこにシフトした瞬間、男女ともに、どんどんジャンプで記録が出るようになったんですよ。道具の進歩=技術の進歩、と言っても過言ではないとぼくは思っているんです。『Tobiha』は、ジャンプをもう半回転増やすことにつながる、それこそ4回転半や5回転といった時代に突入するきっかけになるんじゃないかなと思っています。
松本:
確かにそのきっかけになってくれればいいですね。最初は素人考えで、5回転飛べる靴にしたいということを考えていました(笑)。でも軽くなることによって、単純に演技後半も疲れにくく、ジャンプの持久力にもつながるかもしれない。さらに演技のレベルが上がれば、フィギュアスケートを見る人だって、もっともっと楽しめるはず。そうなっていって欲しいものです。
小塚:
ちなみに、大学院でバイオメカニクスを専攻しているときに聞いた話ですが、「人間の能力的に5回転が限界」だと言われてるらしいんですね。そういった意味でも、『Tobiha』は選手の最大限の力を発揮するための相棒になるんじゃないかなと思っています。
松本:
その助けになると想像すると、今からうれしいですね。
小塚:
ぜひ、5回転いきたいですね。
フィギィアスケーター 小塚 崇彦

2010年バンクーバーオリンピックに出場、2010年全日本選手権では優勝し、その後の世界選手権で2位となる。
現在は、トヨタ自動車の社員としてトヨタイムズ放送部に出演する傍ら、フィギュアスケートを始めとしたスポーツの普及活動を行う。
元選手としての経験を生かし、フィギュアスケートやアイスホッケーのブレードやシューズなどの用具開発にも取り組む。

株式会社ティーワン 代表取締役 松本 哲也

様々な優れた性質を持つカーボンファイバーを専門として、30年以上コンポジット業界に身を置き、
現在は主にレース向け自動車の部品、産業用品含め、カーボンファイバーを使ってあらゆるものづくりを行う。
以前いた会社では、長野五輪金メダリスト清水宏保さんのスピードスケート靴(今日のスピードスケート靴の原型にもなっています)の開発責任者。